2016年11月05日

(コラム) 音声ガイドを聞きながら映画鑑賞 -- どこでもユニバーサル上映を体験させてくれるUDCastアプリ

日本ライトハウス情報文化センターで定期的に開催されているICTサロンですが、今回はUDCastアプリの体験会でした。

このアプリを使えばバリアフリー上映されていない映画でも、音声ガイドや字幕を確認しながら映画鑑賞できるようにしてくれるのです。

バリアフリー映画の上映会では、視覚障害者向けに音声解説が用意されて、聴覚障害者向けには字幕が用意されています。
つまり映画を見ながらFMラジオやスピーカーで音声解説を聞くことのできる上映会、これが各地で開催されているのです。
障害者関連の施設や図書館をはじめ、映画館でも催されています。

音声解説する人のことを英語ではオーディオディスクライバー、Audio Describerと表現するそうです。
オーディオディスクライバーが読み上げてくれた声を録音して会場で流すこともあれば、まるで弁士のように生で解説を聞かせてくれることもあります。

バリアフリー上映は特定の日時に限定されることが多いので、気が向いた時にぶらりと出かけて音声解説付の映画を楽しめるというわけではありません。


そこで考え出されたのがUDCastアプリです。
iOS用とAndroid用のアプリがリリースされています。
もし公開中の映画がUDCastに対応していれば、音声ガイドや字幕のデータをスマートフォンにダウンロードすることができます。
そして、映画館で上映されている映画とその音声ガイドはシンクロして、そのシーンにあった音声解説をイヤホンから流してくれます。

仕組みとしては、映画作品の中に埋め込まれた音声透かしの信号をスマートフォンのマイクがキャッチして、そのシーンにあった音声ガイドを再生してくれるというものです。
この音声信号は人の耳では聞こえない周波数を利用していて、元々は映画泥棒対策として仕様されている技術なのだそうです。
もし映画泥棒が映画館でビデオや音声の隠し撮りをした場合、音声透かしにはどの映画館で収録されたものなのかが分かるようになっているのだそうです。

UDCast対応の映画作品には本編内にこの音声透かしが埋め込まれているので、たとえばDVD化された場合でもUDCastアプリを使って音声ガイドを聞くことができます。
また、テレビ放送された場合でも聞けるわけですが、テレビの場合は時間短縮されたり途中でCMが入ったりするので、音声ガイドと実際の映像にずれが生じてしまいます。その場合は一度音声ガイドを終了させて、再び再起動すればよいとのことです。そうすることで、リアルタイムのシーンの音声透かしをキャッチして的確なタイミングで音声ガイドを聞けるようになります。

UDCast対応の映画の第一号は2016年夏に公開された
NEWS | ONE PIECE FILM GOLD(ワンピースフィルムゴールド)
http://www.onepiece-film2016.com/news/1217.html
です。



ICTサロンの体験会で上映されたのは『起終点駅 ターミナル』という作品のDVDです。
UDCastを利用するには、
アプリのダウンロード、
目的の作品の音声ガイドのデータのダウンロード、
これらが必要です。

映画館で使う場合、頭に入れておくこととしては、
電話や通知に邪魔されないように機内モードにする。
ディスプレイの光が迷惑にならないようにスクリーンカーテンをオンにする。
周りの人に聞こえない程度の音量に調整する。
などでしょうか。


作品が始まる前にアプリ上の音声ガイドボタンを実行しておきます。
待機状態では説明の音声が再生されます。
実際に映画が上映されると、音声透かしをマイクが拾って、音声ガイドが聞こえてきました。

個人的には音声ガイドが聞こえてきたことよりも、スマートフォンのマイク感度ってかなりよいんだなぁという点に感心させられました。


音声ガイドについては、これまでに何度かバリアフリー映画の上映会に参加したこともあるので大きな驚きはありませんでした。
それよりも、どこにでもある映画館に出かけて、いつでも観たい時に映画を楽しむことができる、こういう気軽さはうれしいことだと感じました。


UDCast対応の映画作品はこれから数多く登場するそうです。
日本の代表的な映画製作会社の作品はその傾向にあるようです。
逆に言うと海外の映画製作会社の作品は対応することが期待できないのかもしれません。


UDCastアプリが提供するのは、字幕や音声ガイドだけではありません。
外国人向けに外国語の字幕を提供したりする用途にも利用できるのだそうです。

また、UDCastに対応した映画に『だれかの木琴』という作品がありますが、音声ガイドの原稿を書いているのは映画監督である東陽一さんご本人なのだそうです。
もしかすると本編では伝えきれなかったことを音声ガイドの原稿で表現しているのかもしれません。

音声ガイドは視覚障害がなくっても、映画通の人にとって違う味わい方をさせてくれる役割を果たしてくれるかもしれません。

UDCastは今後の普及に大きな期待が持てるシステムだと感じました。
視覚障害者が近くの映画館にいつでも出かけることの時代、友人に誘われても同じように映画作品を楽しむことのできる日常が近づいてきていますね。

ちなみに河瀬直美監督の次回作品にはオーディオディスクライバーが登場します。

河瀬直美監督×永瀬正敏のタッグ再び、新作『光』2017年公開 - 映画・映像ニュース : CINRA.NET
http://www.cinra.net/news/20161031-hikari



■ 関連情報



視覚障害者向けに音声解説を、聴覚障害者向けに字幕を提供する活動を行っています。
NPO法人メディア・アクセス・サポートセンター MASC 日本語字幕と音声ガイドで感動をみんなのものに!
http://npo-masc.org/

UDCastのページ。対応作品などを確認できます。
Top of UDCast
http://udcast.net/

UDCastのプロモーション動画を視聴できます。
日本ライトハウス情報文化センター − アプリで聴く音声ガイド付き映画鑑賞 〜UDCastの使い方
http://www.iccb.jp/udcast/

京都でバリアフリー映画上映に取り組んでいるグループ。
京都リップル-ホームページ-
http://kyoto-ripple.sakura.ne.jp/

音声ガイドの台本作りのコツが紹介されています。
京都市:「ユニバーサル上映をつくろう」(HTML版)
http://www.city.kyoto.lg.jp/hokenfukushi/page/0000061325.html

いつでもバリアフリー上映をしている映画館
CINEMA Chupki TABATA(シネマ・チュプキ・タバタ)
http://chupki.jpn.org/

UDCastアプリをVoiceOverで仕様することについてまとめたここのブログ記事です。
映画館で音声解説を聞きながら作品を味わい深くしてくれる「UDCast」
http://voicei.seesaa.net/article/444802498.html
posted by @voice_of_i at 23:00| Comment(0) | コラム | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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